セクハラの訴えを受けたら会社は何から始めるか——ハラスメント調査の標準手順
2025-11-15
5秒でわかる結論
セクハラ・パワハラの相談を受けた事業主には調査・事後対応の措置義務があります(労働施策総合推進法30条の2・均等法11条)——放置自体が違法。相談者→行為者→目撃者の聴取、事実認定、処分、双方へのフィードバックという標準手順と三大原則を解説。
女性社員から課長のセクハラの訴えがあった——「しばらく様子を見よう」は最悪の対応です。会社の調査義務はもう始まっています。
調査は法律上の義務
パワハラ(労働施策総合推進法30条の2)・セクハラ(均等法11条)・マタハラ(均等法11条の3等)について、事業主には相談体制の整備・事後の迅速かつ適切な対応の措置義務があります。相談を受けて放置すれば措置義務違反であり、民事上も安全配慮義務違反(債務不履行)として損害賠償の対象になります。
標準手順
- 相談者ヒアリング:具体的事実(5W1H)・証拠(LINE・録音・目撃者)・本人の希望(やめさせたいだけか、処分を求めるか)。相談を理由とする不利益取扱いをしないことを約束します(法30条の2第2項で明文禁止)。
- 証拠保全:メール・チャット履歴・カメラ記録——行為者ヒアリングの前に行います。
- 行為者ヒアリング:申告の要旨を告知(相談者の匿名性は事案により判断)・一項目ずつ確認・十分な弁明の機会を付与。「まず処分ありき」は手続違反です。
- 第三者ヒアリング:目撃者・周囲の同僚。口裏合わせのリスクがあるため個別・同時期に実施。
- 事実認定:供述が対立する場合、客観証拠・供述の具体性・一貫性・虚偽の動機の有無で判断します——「確証がないから認定しない」という機械的処理を裁判所は評価しません(相談者側が提訴した際、会社調査の杜撰さが指摘されます)。
- 措置:認定→懲戒処分(相当性に注意)・配置転換(原則として行為者側を動かす)・再発防止研修。不認定→それでも結論と理由を説明し、環境調整を行います。
- フィードバック:相談者・行為者の双方に結論を通知(詳細の程度は個人情報に配慮)。
よくある失敗
- 被申告者の直属上司・親しい友人を調査者にする——中立性が崩れ、調査全体が無効化します。
- 相談者を異動させる(実質的な報復人事)——不利益取扱い禁止違反の典型です。
- 調査が数か月も長引く——「迅速」要件違反であり、その間の二次被害も会社に帰責されます。
- 外部専門家(弁護士)の活用時期:役員層が被申告者・双方に代理人・性被害事案——社内調査の中立性自体が争点になる類型です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-11-15)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。