敗訴額が2倍になる——残業代訴訟の「付加金」とは
2026-09-11
5秒でわかる結論
裁判所は未払割増賃金・解雇予告手当などと同額の「付加金」の支払いを命じることができます(労基法114条)——敗訴すれば支払額は最大2倍。訴訟に限られ(労働審判では不可)、判決前に本体を支払えば回避できます。和解判断の重要要素です。
残業代請求の訴状が届き、請求金額欄に「未払割増賃金300万円」のほかに「付加金300万円」とある——付加金とは何か。本当に600万円払うことになるのでしょうか。
付加金=制裁的な同額上乗せ
労基法114条:会社が解雇予告手当(20条)・休業手当(26条)・割増賃金(37条)・年休中の賃金(39条9項)を支払わない場合、裁判所は労働者の請求により、未払額に加えて同一額の付加金の支払いを命じることができます。制度趣旨は違反への制裁と支払確保です。
重要なルール
- 裁判所の裁量:「命じることができる」——命じるか・金額(満額か減額か)は、違反の性質・態様・会社の対応の誠実さに応じて裁判所が判断します。悪質な事案(タイムカード改ざん・確信犯)は満額になりやすい。
- 請求期限:違反時から5年(当分の間3年)以内に訴訟上請求する必要があります(114条ただし書・143条2項)。
- 訴訟限定:労働審判・労基署申告・調停では付加金は命じられません——ただし「訴訟に進めば付加金リスクがある」こと自体が労働審判段階の和解の圧力になります。
- 判決確定前に支払えば免れる:判例上、事実審口頭弁論終結時に未払いが存在しなければ付加金は命じられません——訴訟中に本体を支払えば付加金は消滅します。
経営者の戦略判断
- 請求が届いたらまず最悪の数字を計算:本体+遅延損害金(在職中は年3%・退職後は賃確法6条の年14.6%)+付加金≒本体の2倍超。
- 争点が薄い場合(記録が明確・固定残業代の無効が確実)は、早期和解のほうが判決より安い——和解金には通常、付加金と14.6%は乗りません。
- 争う場合も「争う部分と認める部分を分け、争いのない部分を先に支払う」ことを検討——付加金の対象額を縮小できます。
労働者側
訴状に付加金請求を記載するのは標準的な実務です(請求しなければ命じられません)。ただし付加金は和解では通常譲歩カードになります——判決前提の満額主張と現実的な回収のバランスは、代理人と相談してください。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-09-11)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。