【裁判例紹介】無断で深夜6時間の兼業、本業に支障——解雇有効・小川建設事件(東京地決昭和57年11月19日労判397号30頁)
2026-07-20
5秒でわかる結論
無断で毎晩6時間のキャバレー兼業は解雇有効。小川建設事件(東京地決昭和57年11月19日労判397号30頁)——兼業は原則自由だが、本業への支障が限界線。副業規定設計の原点判例。
副業・兼業は原則として従業員の私生活上の自由——しかし「原則」には限界があります。その限界を示した代表裁判例が小川建設事件(東京地決昭和57年11月19日労判397号30頁)です。
事案の概要
建設会社Yの従業員Xは、会社の許可なく、終業後に毎晩キャバレーの会計係として1日約6時間働くことを長期間続けていました。会社は発覚後、就業規則の無断兼業禁止規定への該当を理由に解雇。Xが仮処分で解雇の効力を争いました。
裁判所の判断
- 就業時間外は本来労働者の私生活上の時間であり、兼業は原則として個人の自由——兼業を全面的・一律に禁止する規定の合理性には疑問がある。
- しかし労働契約は誠実な労務提供を本旨とする。毎日深夜に及ぶ約6時間の長時間兼業は、単純労働で時間が長いだけでも睡眠・休養を妨げ、本業への疲労蓄積・労務提供の不完全さを招きかねず、無断であることと企業秩序への影響も踏まえると、解雇事由に該当する。
- 結論:解雇は有効。
経営者への教訓
- 兼業規定の設計は、全面禁止ではなく許可制(届出制)+「本業への支障・競業・信用毀損のおそれがある場合は不許可」が標準形。厚生労働省のモデル就業規則も同じ構造です(68条)。
- 処分の判断軸は「兼業したか」ではなく、①本業の労務提供への支障②競業・情報漏えい③会社の信用毀損の有無。深夜長時間型は支障類型の典型。
- 無断兼業が発覚したら、まず実態調査(時間帯・時間数・内容)をし、就業規則の手続に沿って処分する。兼業が軽微で支障がない場合は注意・警告から。
- 2018年以降、政府は副業解禁を推進していますが、本判例の枠組み——「本業への支障を限界とする」——は現在もそのまま妥当します(当サイト「副業発覚」の記事参照)。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-07-20)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。