ビル管理員の夜間仮眠時間も労働時間——大星ビル管理事件
夜勤の仮眠時間も、警報・電話への対応義務があれば労働時間——大星ビル管理事件(最一小判平14.2.28民集56巻2号361頁)。警備・ビル管理・介護業の未払残業代リスクと宿日直許可の仕組み。
ビル管理・警備・介護施設の夜勤には「仮眠時間」が付きものです。仮眠室で寝ていて、何かあれば起きて対応する——この時間を休憩扱いにして賃金を払わない会社は多いのですが、最高裁は仮眠時間も労働時間だと判断しています。
大星ビル管理事件
大星ビル管理事件(最一小判平成14年2月28日民集56巻2号361頁)は、ビル管理員の夜間仮眠時間(仮眠室で連続7〜9時間)について、警報や電話への即時対応が義務づけられている以上、労働からの解放が保障されているとはいえず、指揮命令下にあるとして労働時間性を認めました。
ポイントは「労働からの解放の保障」です。名目が仮眠・休憩でも、対応義務があり現実に対応の可能性があれば休憩時間ではありません。対応がおよそ皆無といえる例外的事情は、会社側が立証する必要があります。
賃金への影響
- 仮眠時間が労働時間に算入→1日8時間超は25%の時間外割増。
- 22時〜翌5時は深夜割増25%が加算(労基法37条4項)。
- 週40時間を超えた分も同様。時効は3年。夜勤者が多いほど金額は膨らみます。
「宿日直許可」は別の制度
労基法41条3号の監視・断続的労働として労基署の宿日直許可を得れば労働時間規制の適用除外になりますが、許可基準は厳格(実作業がほとんどないこと・十分な睡眠設備等)で、許可なしに「許可を取ったつもり」の運用をすればすべて違法です。
会社側のチェックポイント
- 夜勤の仮眠時間について、対応義務の有無・出動頻度を記録で確認する。
- 宿日直許可の申請、または仮眠時間を労働時間に組み込んだシフト再設計を検討する。
- 介護・警備業界は同種の判決・和解例が多く、請求を受ける前の自主点検が有効です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-03-03)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。