「妊娠したから軽い仕事に——ついでに役職も外す」は違法——マタハラの最高裁ルール
妊娠を契機とする降格は原則違法・無効——広島中央保健生協事件(最一小判平26.10.23民集68巻8号1270頁)。例外は自由意思の承諾か業務上の特段の事情のみ。妊娠等から1年以内の不利益取扱いは原則「契機」と推定。
妊娠した従業員を、会社の善意(あるいは都合)で「軽い業務に——ついでに役職も外して」。これは日本では違法の典型例です。マタハラ規制の中核判例は最高裁が示しています。
法律の枠組み
- 均等法9条3項:妊娠・出産・産休請求等を理由とする解雇その他不利益取扱いの禁止。
- 育介法10条:育休の申出・取得を理由とする不利益取扱いの禁止。
- 妊娠中・産後1年以内の解雇は、会社が「妊娠等を理由としない」ことを証明しない限り無効(均等法9条4項)。
- 上司・同僚のマタハラ言動(「休むなら辞めろ」等)の防止措置義務(均等法11条の3・育介法25条)。
広島中央保健生協事件——降格は原則違法
最一小判平成26年10月23日(広島中央保健生協事件・民集68巻8号1270頁)は、妊娠中の軽易業務転換を契機とする降格(副主任の免除・復帰後も戻さず)について、原則として均等法9条3項違反で無効としました。例外は①労働者の自由な意思に基づく承諾と認めるに足りる合理的理由が客観的に存在する場合②業務上の必要性についての特段の事情、の二つだけです。
「本人も同意していた」という抗弁は厳しく審査されます——有利・不利の十分な説明と真の自由意思を、会社側が立証できなければなりません。
「契機」の認定は広い
行政解釈では、妊娠・産休等から1年以内の不利益取扱いは原則として「契機とした」ものと扱われます。賞与査定の著しい低評価・契約更新拒否・派遣の交替も該当しえます。
会社側の実務
- 軽易業務転換時の役職・賃金の扱いは事前の書面説明+本人の真意確認を残す。
- 育休復帰者は「原職または原職相当職」への復帰が原則。
- 査定は休業期間の不就労分の反映は可能ですが、それを超える不利益は違法方向です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-10-01)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。