制服代は自腹?——費用負担のルールと「給料から天引き」の条件
制服費用の負担ルールを解説。労働者負担には明示(労基法15条)と就業規則記載(89条5号)が必要、天引きには24条協定、着脱時間は労働時間(三菱重工長崎造船所事件)、違約金の禁止(16条)まで。
入社初日に「制服代2万円は初任給から引きます」と言われたら、それは合法でしょうか。
誰が負担するか——法律に定めはないが手続要件がある
制服・作業服の費用負担について法律の定めはなく、労働者負担とすること自体は可能です。ただし:
- 労働条件明示:「労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項」は相対的明示事項です(労基法15条・施行規則5条1項6号)。
- 就業規則記載:同事項は就業規則の相対的必要記載事項です(労基法89条5号)。規則に定めなく負担させるのは違法です。
給料から引く条件
負担自体が適法でも、賃金からの天引きは別問題です。全額払原則(労基法24条1項)の下、控除には書面による労使協定(24条協定)が必要です。協定なしの天引きは違法です(120条・30万円以下の罰金)。
制服の着脱時間は労働時間
事業所内での着用を義務づけられた作業服・保護具の着脱時間は指揮命令下にあり労基法上の労働時間に当たります(三菱重工長崎造船所事件・最一小判平成12年3月9日民集54巻3号801頁)。タイムカード打刻前の更衣10分も、積み重なれば残業代です。
退職時の返還・「返さないなら引く」
- 貸与制服は退職時に返還義務があります(不返還は相当額の請求対象)。
- ただし「返さなければ3万円」のような違約金の予定は労基法16条(賠償予定の禁止)違反で無効です。実損害(残存価値)が上限で、最後の給料からの一方的控除もできません(24条)。
- クリーニング代の負担も同様に、明示+就業規則記載、天引きには24条協定が必要です。
アルバイトの方へ
コンビニ・飲食店で「制服代」「靴は自費」はよくあります。①契約書・労働条件通知書の記載、②控除の労使協定、③退職時の預り金返還条件を確認しましょう。根拠のない控除は返還請求できます(時効5年・当分の間3年)。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-07-15)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。