従業員10人で就業規則の作成義務——ネットの雛形をそのまま使う危険
2025-05-25
5秒でわかる結論
常時10人以上で就業規則の作成・届出義務。フジ興産事件(最二小判平成15年10月10日労判861号5頁)——懲戒処分は就業規則の定めと周知がなければできません。雛形コピーの危険。
「会社はまだ小さいから就業規則は後回し」——日本では、この考えには二つの落とし穴があります。第一に、従業員10人で法律上の義務になること。第二に、就業規則がなければ懲戒処分すらできないことです。
10人以上:作成・届出義務
常時10人以上の労働者を使用する事業場には、就業規則を作成し労働基準監督署へ届け出る義務があります(労基法89条)。作成・変更時には労働者の過半数代表からの意見聴取が必要です(90条)。違反には罰則があります。
「事業場」単位でカウントし、パート・アルバイトも人数に含まれる点に注意してください。
規則がなければ懲戒できない
最高裁判決(フジ興産事件・最二小判平成15年10月10日労判861号5頁)は二つの原則を確立しました。
- 懲戒処分には就業規則上あらかじめ定められた種別・事由の根拠が必要。
- 就業規則が効力を持つには労働者への周知が必要——作って引き出しにしまったままでは、労基署に届け出ていても足りません。
つまり10人未満でも、懲戒の選択肢を残したいなら実務上は就業規則を作るべきです。
ネット雛形の罠
就業規則は一度定めると、会社に不利な条項もそのまま会社の義務になります。雛形によくある地雷:
- 長すぎる休職制度:雛形は大企業向けの設計が多く、休職期間1年・2年と書いてあれば中小企業もそのとおり運用する義務を負います。
- 各種手当:規則に書いた手当は自由に廃止できず、不利益変更には厳しい制約があります。
- 実態との不一致:労働時間・休日が実態と違うと、紛争時にかえって会社に不利な証拠になります。
経営者へのアドバイス
- 雛形は参考にとどめ、条項ごとに「自社で本当に実行できるか」を確認してから採用する。
- 作成後は必ず周知する:配布・掲示・イントラ掲載など。
- 従業員数が10人に近づいたら、早めに準備する。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-05-25)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。