懲戒解雇なら解雇予告手当は不要か——「除外認定」の制度と実務の現実
懲戒解雇でも解雇予告手当は原則必要。免除には労基署長の除外認定(労基法20条1項但書・3項)——基準は昭和23年11月11日基発1637号・昭和31年3月1日基発111号(横領、重大な経歴詐称、2週間以上の無断欠勤で督促に応じない等)。認定は日数がかかり事後申請不可の署もあるため、実務は予告手当を払って即時解雇が多い。
「横領した社員の懲戒解雇に、なぜ1か月分の予告手当を払うのか」——経営者から最も多く聞く不満の一つです。予告手当を免除する制度(除外認定)は確かにありますが、実務で使える場面は限られます。
原則:30日前の予告または予告手当
解雇は少なくとも30日前に予告するか、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う必要があります(労基法20条1項)。懲戒解雇も例外ではなく、懲戒解雇=予告手当の自動免除ではありません。
例外:労働基準監督署長の除外認定
労基法20条1項但書は①天災事変等による事業継続不能、②労働者の責に帰すべき事由の2つの例外を定め、適用には所轄労働基準監督署長の認定が必要です(同条3項)。「労働者の責に帰すべき事由」の判断基準は行政通達(昭和23年11月11日基発1637号・昭和31年3月1日基発111号)が例示しています:
- 事業場内での横領・窃盗・傷害等の刑法犯に該当する行為
- 賭博等による職場規律の著しい紊乱
- 採用条件に関わる重大な経歴詐称
- 2週間以上の正当な理由のない無断欠勤で、出勤の督促に応じない場合
- 遅刻・欠勤が多く、数回注意を受けても改まらない場合
注意すべきは、就業規則上の懲戒解雇事由に該当しても除外認定が下りるとは限らないことです。両者は別の判断です。
実務の現実:予告手当を払う方が早い場合が多い
- 認定には日数がかかり(明白な横領事案でも1週間以上かかった例があります)、法令上の回答期限もなく、スケジュールが立てられません。
- 解雇後の事後申請を受け付けない監督署もあり、原則は解雇前の申請です。
- 認定待ちの間、当該社員が社内に残ることで損害や職場への影響が拡大し得ます。
したがって実務上は、証拠が極めて明白な重大犯罪事案を除き、予告手当を支払って会社のペースで迅速に即時解雇する方が合理的な場合が多いといえます。「盗人に追い銭」と感じられるかもしれませんが、懲戒の本題(雇用関係の迅速な切断・解雇有効性の確保)に照らせば甘受すべきコストの範囲です。個別判断は専門家にご相談ください。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-08-24)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。