主治医は「復職可」、産業医は「まだ無理」——復職判定は誰が決めるのか
復職可否の最終判断は会社にありますが、合理的根拠が必要です。主治医と産業医の意見が対立したとき、裁判例は業務内容の把握の有無を重視。片山組事件(最一小判平10.4.9労判736号15頁):より軽い他の業務に就ける場合、復職を簡単には否定できません。
うつ病の休職期間満了前に、主治医から「復職可」の診断書が出たが、会社の産業医は「まだ不可」と言う——期間満了退職になるのか。どちらの意見が優先するのでしょうか。
判断権は会社に、ただし自由裁量ではない
復職の可否(=「治癒」したか)は会社が判断しますが、その合理性は裁判所が事後審査します。医師の意見が対立する場合、裁判例はおおむね次を見ます:
- 主治医:病状を最もよく知る一方、職場の実態を知らず、「患者の希望どおりに書く」傾向も指摘されます——診断書の「復職可」の根拠・前提条件(短時間勤務前提か、配置転換前提か)が鍵です。
- 産業医:業務内容を知る一方、診察回数は少ない。会社が産業医の書面意見だけで、本人面談も主治医への照会もせず復職を否定した場合、合理性は否定されやすくなります。
片山組事件の射程
最一小判平成10年4月9日(労判736号15頁〔片山組事件〕):従前の業務に就けなくても、現実に配置可能な他の軽易な業務に従事できるなら「労務提供不能」とはいえない。復職の場面でも裁判例はこの考え方を広く援用しています——会社は「元のポジションに100%戻れるか」だけを問うことはできず、一定規模の会社には軽減業務・配置転換の検討義務があります。
従業員側の行動リスト
- 診断書は「復職可」だけにしない——主治医に従事可能な業務レベル・必要な配慮(時短・業務限定)・見通しを書いてもらう。
- 会社からの主治医照会には同意する(拒否すると会社に「判断できない」という口実を与えます)。
- 会社が復職を拒否したら理由の書面説明を求める——後に期間満了退職の有効性を訴訟で争う際の核心的証拠です。
経営者側
標準フロー:主治医診断書→本人面談→主治医照会(本人の同意書)→産業医意見→試し出勤(リハビリ出勤)→復職判定。産業医と主治医の意見が対立するときは、「なぜ産業医意見を採ったか」の具体的理由(業務内容との照合)を書面で残すこと。プロセスを省略した期間満了退職は、解雇無効型訴訟での敗訴リスクが高くなります。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-06-04)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。