【古典判例】寝坊2回の放送事故+虚偽の事故報告書でも解雇無効——高知放送事件(最二小判昭和52年1月31日労判268号17頁)
2026-02-03
5秒でわかる結論
寝坊2回の放送事故+虚偽の事故報告書でも解雇無効。高知放送事件(最二小判昭和52年1月31日労判268号17頁)に見る解雇権濫用法理の利益衡量と処分の均衡。
ミスを2回、しかも不誠実な事後対応まであったのに解雇できない——日本の解雇法制の「厳しさ」を最も有名に示したのが高知放送事件(最二小判昭和52年1月31日労判268号17頁)です。
事案の概要
放送会社のアナウンサーXは宿直勤務中に寝過ごし、昭和42年2月23日午前6時の定時ラジオニュースを10分間全く放送できませんでした(第1事故)。約2週間後に再び寝過ごし、ニュースが約5分間放送できず(第2事故)。Xは第2事故を上司に報告せず、部長から事故報告書の提出を求められると事実と異なる報告書を提出しました。会社は就業規則の普通解雇事由に基づきXを解雇しました。
最高裁の判断
- 一般論:普通解雇事由に形式上該当しても、解雇が客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認できないときは、解雇権の濫用として無効。
- 本件の具体的事情:事故は過失によるもの(故意の怠業ではない)、2回ともファックス担当の同僚記者も寝過ごしてXを起こさなかった、Xの平素の勤務成績は悪くない、同僚はけん責処分のみ、過去の同種事故で解雇された前例もない。
- 結論:解雇をもってのぞむことは「いささか苛酷にすぎ」、社会的相当性を欠き解雇無効。虚偽の事故報告書を考慮しても結論は変わらない。
経営者への教訓
- 日本の解雇審査は個別事案の利益衡量:過失か故意か、損害の程度、平素の勤務態度、処分の均衡(同じ事件で同僚が軽い処分なのは致命的)、過去の同種事例との先例比較。
- 「ミス2回+不誠実」は十分に見えるが、裁判所が見るのは行為と処分の均衡。軽過失の積み重ねには、けん責→減給→出勤停止と段階を踏んで記録を残すのが正道。
- 本判決は解雇権濫用法理の柱となり、2007年に労契法16条として成文化された。日本で解雇を考えるときは常に「処分の階段を上ったか・記録はあるか・均衡はとれているか」を自問すること。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-02-03)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。