明らかに様子がおかしいのに休まない・受診しない——受診命令・休職命令はできるか
受診命令・休職命令を解説。就業規則の合理的規定に基づく業務命令への服従義務(電電公社帯広局事件・最一小判昭和61年3月13日労判470号6頁)、明文なき受診命令の可能性(京セラ事件・東京高判昭和61年11月13日労判487号66頁)、不完全労務提供・包括条項を休職事由に置く規定設計、診断書=要配慮個人情報(個人情報保護法2条3項)と本人同意、客観的事実の記録化まで。
遅刻欠勤の増加、ミスの連発、意思疎通の困難。周囲は皆気づいているのに本人は「病気ではない」と言い張る。会社は受診を強制できるか。本人の同意なく休職を命じられるか。
受診命令——規定があれば万全、なくても不可能ではない
電電公社帯広局事件(最一小判昭和61年3月13日労判470号6頁)は、就業規則等の合理的な規定に基づく相当な業務命令(健康管理規程に基づく受診命令)への服従義務を認めました。京セラ事件(東京高判昭和61年11月13日労判487号66頁)は、就業規則に明文がなくても信義・公平や安全配慮義務を根拠に合理的・相当な受診命令があり得るとしています。
実務の結論は、①就業規則に受診命令条項(指定医受診・費用会社負担)を置く、②命令の前提として健康疑念の客観的事実(勤怠記録・ミス・言動)を揃える、③受診拒否は懲戒や休職発令の考慮要素になり得る、の3点です。
休職命令——会社の単独判断でも可、ただし規定の根拠が必要
私傷病休職は通常、会社の「命令」で発動し本人同意は要件ではありません。ただし就業規則の休職事由への該当が前提です。メンタル不調では本人が診断書を出さず「傷病による欠勤○日」の形式要件が揃わないことが多いため、①不完全な労務提供(出勤はするが通常の業務ができない)も休職事由とする、②包括条項(「その他会社が必要と認めたとき」)を置く、という規定設計が重要です。
診断書・健康情報は「要配慮個人情報」
病名・診断書等は個人情報保護法2条3項の要配慮個人情報で、取得には原則本人同意が必要です。受診命令とあわせて「結果を会社に提供することへの同意」を取得し、主治医照会も同様に扱います。提供拒否の場合は「治癒を確認できず復職可否を判断できない」として本人に不利益が帰する構成が実務です。
実務のポイント
- 命令の前に面談し、客観的事実を記録する(「様子がおかしい」という主観表現を避ける)。
- 命令は書面で、理由・指定医・費用負担を明示する。
- 本人が一切の対応を拒むときは無理をせず、出勤停止・自宅待機等で時間を作り専門家に相談する。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-12-07)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。