退職間際の有休一括消化——会社は拒めるか
2026-09-04
5秒でわかる結論
退職前の有休一括消化は原則拒めない——時季変更権は退職日を超えて行使できない。引継ぎとの調整方法と、退職時に限った買上げの可否。
退職届と同時に「最終月は残り20日の有休をすべて取得します」。引継ぎはどうする——結論:原則として拒めません。
時季変更権は退職場面では使えない
年休は労働者の時季指定で成立し、会社が対抗できるのは時季変更権——事業の正常な運営を妨げる場合に他の日に変更できるだけです(労基法39条5項但書)。退職者には「他の日」が存在しない(退職日後に休暇は与えられない)ため、時季変更権は行使不能。これが確立した解釈です。
引継ぎが終わらないときは
- 引継義務と年休は法的には別問題で、「引継ぎ未了」を理由に取得は拒めません。
- できるのは協議です。「取得前に引継資料の完成を」「退職日を数日後ろへ」——合意ベースなら多くの社員は応じます。
- 「引継ぎしなければ賃金カット」は全額払い原則違反。「引継ぎ懈怠で退職金減額」の規定も、極端に悪質な事案でなければ効力は認められにくいのが実情です。
買取りはできるか
年休の買取りは原則違法ですが、退職時に残った日数の買取りは適法とされています(退職後は取得不能のため)。ただし「買い取れる」のであって「買取りを理由に取得を拒める」わけではありません。本人が取得を望む以上、「金を払うから出勤しろ」は通りません。
予防が本体
この紛争の根源は平時の未消化年休の山です。計画的な消化(年5日の時季指定義務——労基法39条7項)、引継資料の平時からの整備、合理的な退職予告期間の設定——最終月の攻防より平時の管理が解決策です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-09-04)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。