手付金の放棄と倍返し——不動産売買を「やめる」ときの代価(民法557条)
2026-03-01
5秒でわかる結論
手付金の放棄・倍返しを解説。解約手付による無理由解除と「履行の着手」の限界(民法557条)、手付解除・ローン特約解除・債務不履行解除の3ルートの区別、宅建業者売主の手付上限2割・解約手付みなし・保全措置(宅建業法39条・41条)、台湾人買主への注意まで。
売買契約を結び手付金300万円を支払った後に翻意したら、お金は戻るのか。逆に売主がより高い買い手を見つけたら契約を破棄できるのか——答えは民法557条にあります。
解約手付の構造
- 実務の手付(通常、代金の5〜10%)は原則解約手付と推定されます。買主は手付を放棄して、売主は倍額を現実に提供して、理由なく解除できます(民法557条1項)。
- 期限は相手方が「履行に着手」するまで。自分が着手していても自らの解除は妨げられません。
- 着手の例:売主が買主の求めで分筆登記や解体に着手→該当。買主が中間金を支払う→該当。買主の住宅ローン申込みだけ→通常は非該当。個別判断で争いの多い論点です。
- 手付解除では損害賠償は発生しません(557条2項)——放棄/倍返しがすべての代価です。
3つの解除ルートの区別
- ①手付解除:理由不要・代価あり。
- ②住宅ローン特約解除:融資不承認なら無条件解除・手付全額返還。条項と期限が契約書にあることが前提で、期限徒過で失効します。
- ③債務不履行解除:相手の違約時の催告解除+損害賠償。「違約金=代金の20%」条項が併設されるのが通例です。
宅建業法の保護(売主が業者の場合)
- 手付の上限は代金の2割(宅建業法39条1項)。
- 手付は常に解約手付とされ、買主に不利な特約は無効です(39条2項・3項)。
- 未完成物件で代金5%超・完成物件で10%超の手付金等には保全措置が義務づけられます(41条・41条の2)——契約時に保全方法を確認してください。
台湾人買主への注意
日本の「買付証明書」自体に拘束力はありませんが、手付の交付後は現実の代価が発生します。送金前に、手付の性質条項・ローン特約の期限・手付解除期限条項(「契約後○日以内」型)を必ず確認しましょう。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-03-01)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。