【裁判例紹介】試用期間「途中」の解雇は満了時より難しい——ニュース証券事件(東京高判平成21年9月15日労判991号153頁)
2026-06-15
5秒でわかる結論
試用期間「途中」の解雇には「より一層高度の合理性と相当性」が必要。ニュース証券事件(東京高判平成21年9月15日労判991号153頁)——評価期間を自ら打ち切る解雇は満了時より難しい。
「どうせ試用期間内に辞めてもらうなら早く伝えた方がよい」——心情は理解できますが、法律上、試用期間の途中での解雇は満了時の本採用拒否よりハードルが高くなります。これを示したのがニュース証券事件(東京高判平成21年9月15日労判991号153頁)です。
事案の概要
Xは他の証券会社からY証券に営業職として転職し、試用期間は3か月の約定でした。YはXの営業成績や顧客開拓が期待に届かないとして、試用期間の満了を待たず、期間途中で能力・適格性不足を理由に解雇。Xが解雇の効力を争いました。
裁判所の判断
- 試用期間満了時の本採用拒否(留保解約権の行使)は、三菱樹脂事件の枠組みにより通常の解雇より広い裁量が認められる。
- しかしそれは「試用期間全体を使って適格性を観察・評価する」ことが前提。満了を待たずに途中で観察期間を打ち切る解雇は、約定した評価期間を自ら放棄するものであり、より一層高度の合理性と相当性が必要。
- 本件では、短期間の成績不振だけでは「満了まで観察しても無意味」といえるほどの明白な適格性欠如は認められず、指導・改善機会も不十分——解雇は無効とされました。
経営者への教訓
- 試用期間は満了まで使い切るのが原則。途中解雇が許されるのは「誰が見ても明白に不適格で、観察を続ける意味がない」極端な場合——実務上は経歴詐称や重大な非行の発覚にほぼ限られる。
- 中途採用の即戦力でも、期待水準・実際とのギャップ・改善指示・再評価という具体的な指導記録を残す。満了時の本採用拒否もこの記録で支えられる(セガ・エンタープライゼス事件、ブルームバーグ事件参照)。
- 「試用期間3か月」は自社で設定した評価期間。3か月で足りないと考えるなら、入社時に設計しておく(就業規則上の延長条項等)。途中で恣意的に打ち切らない。
- 対比として、新卒技術社員が危険行為・指示違反を繰り返し指導しても改善しなかった事案で、試用期間中の解雇を有効とした例もあります(日本基礎技術事件・大阪高判平成24年2月10日労判1045号5頁)——決め手はやはり事由の重大性+指導記録です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-06-15)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。