「休業手当」と「休業補償」——名前は似て中身は全く別。誰が払う・いくら・併用は?
2026-04-10
5秒でわかる結論
休業手当(労基法26条・平均賃金6割)と休業補償(76条)の違いを解説。会社都合の休業と労災の休業の区別、民法536条2項の賃金全額請求との関係(ノースウエスト航空事件・最二小判昭62.7.17民集41巻5号1350頁)、不可抗力の抗弁の限界まで。
休業手当は会社が払う賃金的な金銭、休業補償(給付)は労災保険の給付です。混同すると、もらえるはずのお金を取り逃します。
対照表
| 休業手当 | 休業補償給付(労災) | |
|---|---|---|
| 原因 | 使用者の責に帰すべき事由による休業(労基法26条) | 業務上の傷病の療養のための休業(労災保険法14条) |
| 支払者 | 会社 | 国(労災保険) |
| 金額 | 平均賃金の60%以上 | 給付基礎日額の60%+特別支給金20%=実質80% |
| 期間 | 休業期間中 | 4日目から(最初の3日は会社の災害補償・労基法76条)、治癒(症状固定)まで |
| 課税 | 賃金として課税・社会保険の対象 | 非課税(労災保険法12条の6。特別支給金も非課税) |
| 請求先 | 会社(不払なら労基署・訴訟) | 労働基準監督署 |
休業手当の「使用者の責に帰すべき事由」は広い
労基法26条の帰責事由は民法536条2項より広く、経営上の障害(原料不足・資金難・受注減・設備故障等)も含みます(ノースウエスト航空事件・最二小判昭和62年7月17日民集41巻5号1350頁)。「今日は暇だから早帰り」「ラインが止まったので自宅待機」——これらを無給にするのは違法で、最低60%が必要です。天災等の不可抗力のみ免責されます。
なお、民法536条2項の帰責事由(違法解雇後の就労拒否等)がある場合は賃金全額(100%)を請求できます——26条は最低保障であって上限ではありません。
休業補償給付のポイント
- 要件:①業務上傷病の療養中、②労働不能、③賃金を受けていない(労災保険法14条)。
- 待期3日:この3日間は会社が労基法76条により平均賃金の60%を補償(通勤災害には会社負担なし)。
- 長期化すれば傷病(補償)年金への切替え(1年6か月経過+傷病等級該当時)。
- 解雇制限:療養休業期間+30日間は解雇禁止(労基法19条)。
よくある混同パターン
- 仕事中のけがに「休業手当60%を払うから」で済まされる → 誤り。業務災害は労災であり、休業補償給付(実質80%・非課税)を申請し、不足分(慰謝料等)は別途民事請求します。「手当」で済ませようとするのは労災かくしの兆候です。
- 私傷病の休職 → どちらでもなく健康保険の傷病手当金(3分の2)。
- 会社都合の自宅待機 → 休業手当(26条)の問題です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-04-10)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。