内定を出した後に取り消せるか——内定取消しの法律リスク
2026-06-25
5秒でわかる結論
採用内定で労働契約は成立する(大日本印刷事件・最判昭54.7.20)。内定取消しは解雇であり、内定当時知り得なかった事実で客観的に合理的な場合に限られる。
「内定を出した後に業績が悪化した」「どうも適性がなさそうだ」——日本では、内定取消しのハードルは想像以上に高いものです。
内定=労働契約の成立
大日本印刷事件(最二小判昭和54年7月20日民集33巻5号582頁)は、採用内定により「始期付・解約権留保付労働契約」が成立するとしました。契約は内定段階で成立しており、内定取消しは法的には解雇(留保解約権の行使)です。
同判決の基準:取消事由は「内定当時知ることができず、また知ることが期待できない事実」に限られ、それを理由とする取消しが客観的に合理的で社会通念上相当と認められる場合にのみ許されます。
認められる例・認められない例
- 認められる方向:卒業できなかった(新卒採用)、重大な経歴詐称の発覚、労務提供が不可能な健康状態の悪化、提出書類の重大な虚偽。
- 否定される方向:「グルーミー(陰気)な印象」といった主観的理由(大日本印刷事件自体がこの型で取消し無効)、内定時に既に知っていた事実、単なる業績悪化(整理解雇の4要素に準じた厳格な審査を受けます)。
経営者の実務
- 内定通知書・誓約書に取消事由(卒業不能・経歴詐称・就労不能な健康状態・刑事処分等)を明記する。書けば万能ではありませんが、書かないのはより不利です。
- 業績悪化型では、入社時期繰下げ+補償などの代替案を検討した記録(回避努力)を残す。
- 違法な内定取消しには、地位確認+慰謝料請求のリスクに加え、新卒では企業名公表の制度もあります(職業安定法施行規則17条の4)。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-06-25)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。