過半数代表者の正しい選び方——会社が指名した代表の36協定は紙くず(トーコロ事件)
2025-12-27
5秒でわかる結論
過半数代表者の選出を解説。要件は①管理監督者でない②協定締結目的を明示した投票・挙手等の民主的手続③使用者の意向に基づかないこと(労基則6条の2)、親睦会代表が署名した36協定を無効としたトーコロ事件(最二小判平13.6.22労判808号11頁)、不利益取扱いの禁止まで。
「ベテラン社員を代表にして36協定にサインさせればいい」——その人が会社の指定なら、締結したすべての協定は法的に紙くずです。残業はすべて違法、賃金控除もすべて違法になります。
代表者の3要件(労基法施行規則6条の2)
- 管理監督者でないこと(労基法41条2号該当者は不可)
- 協定締結等の目的を明らかにして、投票・挙手等の民主的方法で選出されること
- 使用者の意向に基づき選出された者でないこと(2019年に明文化)
トーコロ事件の教訓
最二小判平成13年6月22日労判808号11頁:社内の親睦会(互助的組織)の代表幹事が当然のように36協定に署名していた事案で、裁判所は民主的に選出された過半数代表ではないとして36協定を無効と判断——時間外労働命令は根拠を失いました。「誰かがサインしている」では足りません。無効の連鎖:36協定無効=残業は32条違反(刑事罰の対象)、24条協定無効=控除は全額払違反です。
違法な選出の典型
- 総務部長が「ついでに」代表を兼任(管理監督者+会社の意向の二重アウト)
- 会社の指名「今年は君ね」、回覧板に1人の名前だけ書いて「異議なければ信任」としつつ反対の現実的手段がない
- 正社員限定の投票(パート・アルバイト・外国人技能実習生も分母であり投票者——「過半数」は全労働者が基準です)
- 一度選んで10年改選なし(任期・協定ごとの確認を)
適法なフローの例
- 公示:「36協定締結等のため過半数代表者を選出します」+候補者募集(自薦他薦)。
- 全労働者(非正規含む)対象の投票・挙手・回覧署名——記録を保存(選出日・方法・結果)。
- 電子投票も可(方法の民主性を確保)。
- 代表者の活動への不利益取扱い禁止・必要な便宜供与(労基則6条の2第3項・4項)。
コストは極小(年1回の投票手続)、リスクは極大(協定全滅)。労務管理で最も費用対効果の高い整備事項です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-12-27)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。