職場のストレスでうつ病に——精神障害の労災認定と解雇制限
うつ病・適応障害も労災になる——心理的負荷による精神障害の認定基準(2023年改正でカスハラ追加)。会社の同意なしで申請可。認定されると療養中+30日の解雇禁止(労基法19条)という強力な保護。
長時間労働・パワハラ・過重な業務上の出来事でうつ病・適応障害になった——それは労災かもしれません。精神障害の労災認定件数は増加を続けており、仕組みを知っておく価値があります。
認定の枠組み——心理的負荷評価表
厚労省の「心理的負荷による精神障害の認定基準」(2023年9月改正)は三段階で判断します。
- ①対象疾病(うつ病・適応障害等)の発病
- ②発病前おおむね6か月間の業務による強い心理的負荷——「特別な出来事」(発病直前1か月に160時間超の時間外労働等)または負荷表で「強」となる具体的出来事(ひどいパワハラ、顧客からの著しい迷惑行為=カスハラも2023年に追加)
- ③業務以外の原因(私生活・既往症)が主因でないこと
時間外労働の目安は、発病前1か月100時間・2〜6か月平均80時間などの恒常的長時間労働で「強」方向に評価されます。
申請の流れ
労働基準監督署に療養補償給付・休業補償給付の請求書を提出します。会社の同意は不要で、会社が証明欄への記入を拒んでも申請できます(労基署が会社に調査します)。結果まで通常6か月〜1年。不支給なら審査請求が可能です。
認定後の強力な保護——解雇制限
業務上傷病の療養のための休業期間+その後30日間は解雇禁止です(労基法19条)。私傷病休職の期間満了退職の扱いも適用されません。つまり労災認定が出ると、休職満了処理や解雇は基本的に封じられます。給付は療養費全額・休業補償(給付基礎日額の8割)・障害補償などです。
会社側の注意
- 労災申請への協力拒否は紛争の火種になり、証拠上も不利に働きます。
- 認定前は私傷病休職で処理し、認定後に遡って訂正する実務が一般的です。
- 労災認定=民事賠償責任の確定ではありませんが、安全配慮義務違反の損害賠償請求が続く例は多く、労働時間管理とハラスメント対策という予防こそが本体です。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-05-03)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。