執行役員制度——会社法上の役員ではない。雇用型・委任型の区別と「解任」の落とし穴
2026-06-11
5秒でわかる結論
執行役員制度を解説。会社法上の機関ではなく雇用型・委任型の区別が重要なこと、雇用型の「解任」は降職にすぎず退職させるには解雇法理が必要なこと、委任型でも実態による労働者性認定のリスク、制度設計と移行時の注意まで。
「執行役員に上げて、だめなら解任すればいい」——雇用型執行役員なら、解任後も彼はあなたの会社の労働者のままです。辞めてもらうには解雇の理由が必要になります。
執行役員とは
- 会社法に存在しない任意の役職です。取締役(機関)とも、指名委員会等設置会社の「執行役」(機関)とも違う——純粋に社内の肩書・ポストです。
- したがって法律関係は契約の実態で決まります:①雇用型=労働契約が続いたままの上級職(部長の延長)②委任型=いったん退職して委任契約を締結。
雇用型(中小企業の多数)
- 労働者のまま:労基法・労契法が全面適用、雇用保険・労災の対象、解雇法理も適用。
- 「執行役員の解任」=降職(人事権の行使)にすぎず、合理的範囲なら可能ですが、賃金の大幅引下げには根拠(就業規則・合意)が必要です。
- 管理監督者(労基法41条2号)該当性は別途判断——「役員」の肩書で残業代が不要になるわけではありません。
委任型
- いったん退職(退職金精算)→委任契約。任期・報酬・解除条件は契約で定め、民法651条により原則いつでも解除可(不利な時期の解除には賠償の問題)。
- ただし実態としての労働者性のリスク:指揮命令下の労働・時間的拘束・報酬の労務対価性が強ければ、委任の名でも労働者(労基法9条)と認定され——解任が解雇として扱われ、残業代請求もあり得ます。
制度設計の要点
- まず型を決める:雇用型(安全・簡明)か委任型(柔軟・リスク管理は精緻に)か。
- 雇用型:執行役員規程(選任・解任・処遇・任期)+降職時の賃金規定。
- 委任型:退職手続(退職金・社会保険・雇用保険の喪失)→委任契約書(職務・報酬・任期・解除・秘密保持・競業)。中途半端な「退職金は精算しない・仕事はそのまま」が紛争のもとです。
- 対外表示に注意:執行役員に「役員」名義で契約させると表見代理などの責任問題——権限の範囲を内規で明確に。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-06-11)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。