雇用契約書を作らずに働かせている——口約束採用の危険
雇用契約は口頭でも成立しますが、労働条件の書面明示は罰則付きの義務。書面がないと困るのは会社です。2024年改正の追加明示事項も解説。
「身内だから、給料だけ口頭で決めて勤務開始」——よくある話ですが、日本ではリスクを全部会社が抱え込むやり方です。
契約は口頭でも成立する。しかし「明示」は法律上の義務
雇用契約自体は口頭の合意でも成立します(労契法6条)。しかし使用者は雇入れ時に労働条件を明示する義務を負い(労基法15条1項)、賃金・労働時間・就業場所・契約期間などの重要事項は書面(労働条件通知書。本人同意があれば電子メール等も可)での明示が必要です(労基則5条)。違反には30万円以下の罰金があります(労基法120条1号)。
2024年4月からの追加明示事項
- 就業場所・業務の変更の範囲
- 有期契約の更新上限の有無と内容
- 無期転換申込権に関する明示(労契法18条関係)
書面がないと困るのは会社
「月給30万と言った」「いや25万だ」「転勤の話は聞いていない」——書面がなければ、明示義務を負うのは使用者である以上、裁判所は労働者の主張に傾きがちです。試用期間、固定残業代、配転条項、懲戒事由——会社を守る仕組みはすべて書面があって初めて機能します。固定残業代は金額と対応時間数の明確な合意がなければ無効とされ、残業代を別途全額支払うことになりかねません。
実務の指針
①全員と雇用契約書(労働条件通知書兼用)を取り交わす ②2024年改正事項を反映した最新版にする ③常時10人以上なら就業規則の作成・届出(労基法89条)と周知(労基法106条1項)。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-07-25)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。