内定辞退と内定者フォロー——学生は辞退できるのに、会社は取り消せない非対称
2026-06-03
5秒でわかる結論
内定辞退と内定者フォローを解説。内定=始期付解約権留保付労働契約(大日本印刷事件・最二小判昭54.7.20民集33巻5号582頁)、会社の取消しは厳格だが学生の辞退は民法627条の2週間予告で自由という非対称、賠償請求の困難さ、内定者研修の参加強制不可まで。
10月に内定を出し、3月に辞退された——「研修までしたのに、賠償請求できないか?」。結論はほぼできないです。内定の法律関係は会社側に一方的に厳しくできています。
内定の法的性質
採用内定通知+入社誓約書の提出により、始期付・解約権留保付労働契約が成立します(大日本印刷事件・最二小判昭和54年7月20日民集33巻5号582頁)。つまり契約はすでに成立しており、就労開始日が将来にあるだけです。
非対称の理由
- 会社側の取消し=留保解約権の行使。「内定当時知ることができず、知ることが期待できない事由で、社会通念上相当」な場合に限り有効(同判決)。業績悪化などの理由は整理解雇に準じて審査され、ハードルは高いものです。
- 内定者側の辞退=期間の定めのない労働契約の解約。民法627条1項により2週間前の予告で足り、理由は問われません。入社誓約書に「辞退しません」と書かせても拘束できません(職業選択の自由・強制労働の禁止)。
辞退に賠償請求できるか
原則困難です。極端に悪質な場合(入社前日の理由なき翻意、虚偽の入社意思表示で会社に多額の費用を投じさせた等)には信義則上の賠償の余地が理論上ありますが、認められた例はごく少なく、金額も限定的です。賠償を持ち出して辞退者を威嚇する行為自体が違法(強要)となり得ますので、絶対に避けてください。
適法な辞退防止(内定者フォロー)
- 定期的な連絡・職場見学・懇談会——自由参加が原則。
- 内定者研修:入社前に労働義務はなく、参加を強制できません。参加を求めるなら労働に当たり、賃金(最低賃金以上)の支払義務があります。課題の量も学業優先で節度を。
- 「誓約書・保証人」など手続を重くしすぎると、かえって辞退を促します。
- 辞退が出たら:理由を確認して記録(次の採用の改善材料に)。引き止めに固執しないこと。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-06-03)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。