「失踪が怖いから会社がパスポートを保管」——2025年東京高裁:違法
2026-10-21
5秒でわかる結論
同意書があっても違法。パスポートの会社保管には刑罰もあり、2025年の東京高裁は「生命に次ぐ重要な物」として賠償を命じました。
「従業員が逃げるのが怖いから、パスポートは会社で預かる」。外国人を雇用する経営者の中には合理的と感じる方もいますが、日本では極めてリスクの大きい行為です。
技能実習法は、実習生のパスポート・在留カードの保管を明文で禁止しています。本人が「同意書」に署名していても許されません。「自発的な保管依頼」も多くは疑わしいとされ、技能実習生・特定技能外国人の受入資格を5年間失うおそれがあります。さらに、本人の意思に反するパスポートの保管には6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金があり、従業員個人だけでなく会社も処罰され得ます(両罰)。
2025年の東京高裁判決(令和7年9月11日・アドバンスコンサル行政書士事務所事件控訴審)では、フィリピン籍の女性従業員に「パスポート管理契約」を結ばせ、退職後も返還を拒んだ雇主について、パスポートは外国人にとって「生命に次ぐ重要な物」であり、引き留め目的の保管は外国人労働者の正当な利益を侵害する違法行為と判断し、賠償を命じました。
経営者への実務対応
- パスポート・在留カードは本人保管が原則、会社はコピーのみ。在留カードは法律上携帯義務があるため、そもそも会社が取り上げることはできない。
- 本人から「預かって」と言われても断る。同意書があっても違法になり得るうえ、「自発的だったか」の立証責任は事実上会社側に。寮の貴重品は本人が施錠できるロッカーを用意すれば足りる。
- 在留期限の管理は台帳で:在留資格・期限を記録した名簿を作り、期限の2〜3か月前に本人へ更新を促す。「情報」の管理は適法、「証件」の取上げは違法——この線引きを明確に。
- 離職・失踪防止の王道は労働条件:賃金の全額・期日払い、明確な労働条件、母語で相談できる窓口。パスポートで人を縛るのは違法であるだけでなく、SNS時代には会社の採用力そのものを失わせる。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-10-21)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。