「産業医」は誰の医者か——50人以上の会社が選任すべき医師にできること
2026-06-09
5秒でわかる結論
50人以上の事業場で選任義務のある産業医(安衛法13条)の役割を解説。長時間労働者・高ストレス者の面接指導、職場巡視、勧告権、復職判断での産業医意見と主治医意見の関係まで。
「産業医面談」は会社の監視ではなく、法律に基づき選任され、医学の専門的立場から労働者の健康を守る医師の制度です。
50人以上は選任義務(安衛法13条)
常時50人以上の労働者を使用する事業場は産業医の選任が義務です(労働安全衛生法13条、施行令5条)。1,000人以上(有害業務は500人以上)は専属産業医が必要です。50人未満は努力義務で(13条の2)、地域産業保健センターの無料サービスを利用できます。
産業医の職務
- 健康診断の事後措置:有所見者について医師の意見聴取(66条の4)。
- 長時間労働者の面接指導:月80時間超の時間外・休日労働で疲労の蓄積が認められる者の申出時(66条の8)。
- ストレスチェック後の高ストレス者面談(66条の10)。
- 職場巡視:原則月1回(情報提供があれば2か月に1回まで緩和可。安衛則15条)。
- 休職・復職の意見:復職可否の判断は実務上、産業医意見に大きく依拠します。
産業医の「勧告権」
産業医は労働者の健康確保のため必要と認めるとき、事業者に勧告できます(13条5項)。会社は勧告を尊重し、内容を衛生委員会に報告する義務があります(13条6項)。2019年改正で、会社から産業医への情報提供義務(13条4項)など独立性が強化されました。
面談時の注意
- 産業医には守秘義務があります(105条・刑事罰付き)。ただし就業上の措置に必要な範囲は意見書として会社に伝わります。何が伝わるかはその場で確認できます。
- 産業医は主治医ではありません。治療は主治医、産業医は「働けるか・どんな配慮が必要か」の判断役です。意見が食い違う場合、裁判例は職場の実情を知る産業医意見を重視する傾向にありますが、主治医の診断書も重要な資料です。
- 外国人労働者は、面談への通訳手配や翻訳ツールの利用を会社に求めてよいでしょう。症状が正確に伝わらないことは双方のリスクです。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-06-09)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。