在職中に死亡——死亡退職金・未払給与は誰のものか。遺産に入るとは限らない
2025-10-22
5秒でわかる結論
死亡退職金の扱いを解説。受給権者の定めがあれば相続財産ではなく固有の権利(最一小判昭55.11.27民集34巻6号815頁)、相続放棄しても受け取れる場合、相続税法上はみなし相続財産(非課税枠500万円×法定相続人数)、遺族補償との関係まで。
家族が在職中に亡くなり、会社から「死亡退職金と未払の給与があります」と言われた。誰が受け取るのか、遺産分割の対象か、相続放棄をしても受け取れるのか——お金の種類で答えが違います。
死亡退職金:就業規則の受取人規定を見る
- 規程に受取人の定めがある場合(多くは労基法施行規則42〜45条の遺族補償の順位を準用:配偶者〔内縁を含む〕→生計同一の子…):判例は受取人の固有の権利であり相続財産に属さないとします(最一小判昭和55年11月27日民集34巻6号815頁)。→遺産分割の対象外で、相続放棄をしても受け取れます。
- 定めがない場合:解釈問題で、相続財産とした例と慣行から受取人を認定した例に分かれます。
- 内縁の配偶者:規程が労基法施行規則の順位を準用していれば、内縁が法律婚以外の親族に優先します——遺産では相続権のない内縁配偶者が受け取れるのが死亡退職金の特徴です。
未払賃金(最後の給与・残業代):相続財産
既発生の賃金請求権は通常の金銭債権として相続財産に入ります。法定相続人が相続分に応じて承継し、遺産分割の対象です。相続放棄をすれば受け取れません。会社が「遺族代表」に支払う実務では他の相続人の同意確認が必要です(会社側には二重払リスク)。
相続税の取扱い
- 死亡退職金:民法上は相続財産でなくても、相続税法上はみなし相続財産(相続税法3条1項2号。死亡後3年以内に支給が確定したもの)。ただし非課税枠:500万円×法定相続人の数(12条1項6号)——死亡保険金の非課税枠とは別枠です。
- 弔慰金:業務上の死亡=給与3年分、業務外=給与6か月分まで非課税(超過分は退職金として課税)(相続税法基本通達3-20)。
- 未払給与:本来の相続財産として相続税の対象(死亡後に支給期が到来するものは源泉徴収せず相続税で処理するのが国税庁の取扱い)。
会社人事の実務リスト
- まず就業規則・退職金規程の死亡退職金条項(受取人規定)を確認します——支払先を誤れば二重払リスクであり、遺族から写しを求められれば提供すべきものです。
- 未払賃金・退職金・弔慰金・財形・持株会・企業年金(確定給付・確定拠出)・団体生命保険は、それぞれ受取人の定めが違うため一つずつ確認してから支払います。「遺族代表」への一括払いの前に他の相続人の同意確認が必須です。
- 業務起因の死亡(過労・事故)の疑いがある場合、遺族側は労災の遺族給付と安全配慮義務違反の賠償請求を並行検討してきます——弔慰金支払時の清算条項の設計は慎重に。性急な署名取得はかえって紛争の火種になります。
- 外国籍の遺族:本国の戸籍・親族関係証明書+日本語訳で手続でき、海外居住の相続人も権利は同じです——「海外にいるから」を理由に支払いを拒むことはできません。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2025-10-22)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。