本採用拒否の正しい進め方——判断時期から通知書交付までの実務手順
本採用拒否の正しい進め方。試用期間=解約権留保付労働契約(三菱樹脂事件・最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)、入社14日超で30日予告(労基法20条・21条但書)、意思表示は期間内に確定的に(日本オラクル事件・東京地判令和3年11月12日労経速2478号18頁)。期待水準の文書化→記録→満了1か月前判断→通知書交付の4手順。
「試用期間が終われば自由に本採用を断れる」というのは最も多い誤解です。試用期間中の労働契約は解約権留保付労働契約であり、本採用拒否=留保解約権の行使=解雇として、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です(三菱樹脂事件・最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)。本採用拒否を通すには、手順の管理が鍵になります。
手順1 採用時:期待水準の文書化
すべてはここから始まります。採用通知書・労働条件通知書にポジション・期待される職責・試用期間の長さと評価基準を明記します。中途・経験者採用では期待水準を新卒より高く設定でき、裁判所もこれを認めています(当サイト「令和以降の本採用拒否有効例」特集参照)。
手順2 試用期間中:記録+指導+改善機会
- 問題行動は「日付・場面・言動・影響」を一件ずつ記録(日報・面談記録・メール)。
- 問題を発見したら直ちに指導し、「何を指導し、本人がどう反応し、改善があったか」を記録。
- 「能力不足」「協調性がない」という抽象評価は法廷で証明力を持ちません。武器になるのは具体的事実だけです。
手順3 判断時期:満了1か月前が実務上のデッドライン
入社後14日を超えると、解雇には30日前の予告または予告手当の支払いが必要です(労基法20条・21条但書)。また本採用拒否の意思表示は試用期間内に確定的に行う必要があります——期間内に留保解約権が確定的に行使されていれば、効力発生日が満了後でも構いません(日本オラクル事件・東京地判令和3年11月12日労経速2478号18頁)。逆算すると満了の1か月前までに判断を終える必要があります。
手順4 通知書の交付
- 「本採用拒否通知書(解雇予告通知書)」を書面で交付し、解雇日・就業規則の根拠条項・具体的理由を明記。
- 本人から請求があれば解雇理由証明書の交付義務があります(労基法22条)。訴訟で通知書にない理由を追加主張すると疑われるため、理由は最初から漏れなく記載を。
- 面談では議論せず、決定と理由を簡潔に伝え、録音に利用されかねない余計な発言を避けます。
本採用拒否は通常の解雇より広く認められるとはいえ、解雇であることに変わりはありません。手順を一つ飛ばすと全体が無効と判断され得ます。実行前に日本の労働法に詳しい専門家への相談をお勧めします。
※ 本記事は一般的な法律情報であり、個別の案件に対する法的助言ではありません。実際の案件については必ず弁護士にご相談ください。本記事の内容は記事作成日(2026-10-25)時点の法令・判例に基づくものであり、その後の法改正等により変わることがあります。